エロノベル脳ジェネレーション

TL小説ばっかり読んでるママです

ミステリー小説とTL小説を一度に味わえる一冊

 たいていTL小説のストーリはあるようでない、あったとしてもよくある話。でもごくたまに趣向を凝らしたストーリーと出会うことがある。ないと思ったものがあると不意を打たれて普通以上に興奮する。最近読んだ「背徳の接吻」もそんなTL小説。

 

 

背徳の接吻 (ソーニャ文庫)

背徳の接吻 (ソーニャ文庫)

 

 

 まず最初の設定からして珍しい。ヒロインの恋の相手が人狼として見世物になってる青年である。えっ??フリークスとのロマンス?そんな社会階級最底辺の男性なんて全然魅かれない…。でも安心して。彼は当初こそ人語を解さない人狼だが実は貴族の御子息という設定なのだ、よかった~!
 ヒロインのグレースちゃんはサーカスで青年を拾って保護。「彼こそ7歳のときに失踪した幼なじみのアランかも!」と感じる。青年は一向に言葉を話さず、グレースちゃんは「やっぱりアランじゃなくて、ただのかわいそうな人狼かも」と迷う。手厚いお世話の結果、青年はグレースちゃんに完全に懐き、ぐいぐい身体的接触をしてくる。グレースちゃんも悪い気はしない。彼は突如言葉を思いだし、生家から公式にアランと認められる。教育を受けて素敵な紳士へと生まれ変わる。立派な貴族となった青年から熱烈なアプローチを受けるグレースちゃん。彼と結婚を誓うさなか、問題が浮上。彼がグレースちゃんの双子の弟クリストフである可能性が出てきたのだ。弟クリストフもアランと一緒に失踪している。青年の過去の記憶はあいまいでクリストフともアランとも分からずはっきりしない。グレースちゃんは悩む。

 この小説の魅力は青年の二面性にある。

 最初は青年が「人狼か貴族か」で揺れる。このくだりが良い。低階級の野蛮な男に迫られてドキドキ!と興奮しつつ、でも実際はお貴族様なんだけどね!と安心もできる。やだ一度で二度おいしい…。
 物語後半は「弟クリストフか幼なじみアランか」という揺れがある。中盤明かされるが実はグレースちゃん実の弟とただならぬ仲だった。幼少期に弟とあんなことやこんなことをしていていたのだ!背徳の関係!グレースちゃんは青年が弟クリストフであることを望んでいるようにも思える。でも弟だったら結婚できない。どうしよう!以下深刻なネタバレ。作品を読みたい人は読まないで。

 終盤「グレースちゃんには出生の秘密があってクリストフともアランとも血がつながってませんでした!どっちでもセーフ!」という話が神父から明かされて、一件落着。晴れて二人は結婚。物語はそこからもう一回転する。

 結婚後、神父はグレースちゃんを指して「伯爵夫人(クリストフの実母)に似ている」と述懐。えっ?やっぱりグレースちゃんとクリストフは実のきょうだいなの??
 さらに青年は失踪した後の状況を神父にだけ語る。「失踪した二人のうち片方は死んでしまったが、死んだ人間は今も生き残った人間の中に生きている。今話している自分は弟の方」と告白。そう、青年は二重人格だったのです!でも青年が弟か幼なじみのどちらなのか明かされない。
 最後グレースちゃんはアランの人格といちゃこらした後、入れ替わった弟クリストフの人格ともいちゃこらしてハッピーエンド。アランのまっすぐで情熱的な感じもいいし、クリストフの危険な感じもいいよね、一度で二度おいしいよね!
この青年はクリストフ、アランどっちなのか?最後まではっきりとは書かれていない。でも作中のあれやこれやで何とな~くこっちなんじゃないかな~!?という予想がつく。きっと彼は実の弟クリストフ。タイトルからして「背徳の接吻」でも公式HPの番外編を読むとどっちとも取れる。う~んどっちだろう!?
 そんな感じで、この作品はTL小説とミステリー小説両方のおいしさが味わえる。やだ一度で二度おいしい…。好き…。