エロノベル脳ジェネレーション

TL小説ばっかり読んでるママです

革新でありながら保守、痺れる絶妙設定のエロノベル

 子育てやエロノベルを読む合間に読書会なんかにも行く。涼しい顔でカズオイシグロの話なんかをしている。「信頼できない語り手と言われてますが、要は自慢話ばっかりする奴は信頼できないという当り前のことでして…」なんて言ってる。会員は50代60代の、穏やかで知的な人たちばかり。あるときインテリメガネおじさまが私にこう聞いてきた。「カズオイシグロなんか読むんだ。他にはどんな本が好きなの?」そのとき私は絶句した。なぜなら直近で読んだ本が『マジメな魔王様を誘惑したらドSな絶倫になりました。』だったからだ。あれ?他にも1冊ぐらいは読んでるはずなのに、全然思い浮かばない!どうしよう!答えられないよ~! 

マジメな魔王様を誘惑したらドSな絶倫になりました。

マジメな魔王様を誘惑したらドSな絶倫になりました。

 

 『マジメな魔王様を誘惑したらドSな絶倫になりました。』は素晴らしい作品だ。欠点は偏差値低そうなタイトルぐらいで 、次元が2回ねじれたらブッカ―賞も取れる。

 ヒロインは薄い本の大好きな悪魔のリリスちゃん、一流の悪魔教育を受けた御令嬢だ。婚約者の魔王ルシフェル様と初めて顔を合わせる。どんな残忍な悪魔かと期待するも、ルシフェル様は真面目で優しい性格。リリスちゃんがっかり。それでも両親からの厳命を受け、リリスちゃんは魔王の本能を目覚めさせるべく、ルシフェル様を誘惑する。童貞のルシフ ェル様は恥ずかしがるばかりで、リリスちゃんは焦る。とうとうヤバい薬に手を出す…という心躍るストーリー。

 この作品の革新的な点は、ヒロインが積極的に男性に迫っていくところだろう。TL小説のよくあるヒロイン像は性に対して無知純真で保守的な性格、迫るよりは迫られる。なのにリリスちゃんは露出度の高い服を着てぐいぐいルシフェル様に アタックする。なんて下品な女だ!けしからん!となるところを「悪魔の御令嬢」という設定がうまく利いてそうならない。リリスちゃんも実は真面目で優しい女の子、悪魔らしからぬ自分の性格がコンプレックス。正しい悪魔たろうとして必死なのだ。リリスちゃんは「エロくて積極的なのに真面目で健気な処女」という相反する要素を持った素晴らしいヒロイン、すごい。

 更に、お約束である「ヒロインが男たちに襲われて危ない目に!」というシーンもある。これがリリスちゃん、とんでもない目に遭っている。TL小説史上稀に見るところまで致されてからルシフェル様に助けられる。しかも襲った男(悪魔)たちはお咎めなし。これは全て「悪魔だからしょうがない」という設定で片づく。すごい。

 とはいえ、こんな悪魔とか魔王なんてあり得ないのはちょっと…と躊躇する方もいらっしゃるだろう。そこは作者熟練の技術で、奇天烈な設定なのに妙な実在感がある。

 冒頭、両親の寝室にリリスちゃんが呼び出されるシーンから話が始まる。(両親は乱痴気パーティー中です)

「まあ、もう少し近くへ寄りなさい」

「はい、お父様」

ポールギャグを噛まされながらもなめらかに喋る父の滑舌に驚嘆しつつ、リリスは言われるままにそのベッドの傍らに立っ た。そもそも近寄らないと、周りの喘ぎ声のせいで父の言葉がよく聞こえない。

 亀甲縛りにされた父アスモデウスは満足げに娘の姿を眺め、微笑した。(中略)妻との夜通しの攻防でやつれた上にポールギャグと鼻フックなので、今は豚の如き微笑であった。

 うーんなんか人間っぽいよね…!

 こんなラノベラノベしたタイトルですが、セリフ回しが大変古風で日本的なのでおじさんおばさんでも安心して楽しめる作品となっております。むしろ子供は読んじゃ駄目だよ。表紙もちょっといかがわしいからね^^気をつけてね^^